伝統を受け継ぎ未来へ、神主という役目。
※部室貴船神社にて篠崎さん
「神主も農業も本業です」
力強くそう語るのは、農業と神主を兼業しながら地域に関わる篠崎弘(しのざき・ひろし)さん(45)。古くは江戸時代以前から守られてきた地区の鎮守様(神社)を陰で支える。今年のような変化が大きい年に、どんな目線で地域に関わっているのか、お話を伺った。
今年は新型コロナウイルスの影響の中で、生活スタイルの変化や集団行事の自粛など、例年とは違った1年だった。緊急事態宣言後の夏には、祭礼を中止にしようかという話もあったそうだが、篠崎さんは「そもそも神社の夏祭りは疫病退散が目的であり、昔からの伝統ある神事をやらないというのは本末転倒になりかねない。今だからこそやらなくてはならないのでは」と提案した。
結果的に重々対策を取った上で、夏祭りも秋の祭礼も全て予定通り執り行う事ができたそうで、「感染症は正しく怖がる必要がある。脈々と受け継がれてきたものを安易に切ってしまってはいけない、繋いでいくことが大事です。今は笑顔が少ない時代といわれますが、人間は心の生き物なので、心の豊かさを大事にする上で、地域信仰は大切に守り継いでいきたい」。優しい表情でそう語る篠崎さんからは、地域愛と伝統を未来へ繋ぐ強い志を感じた。
篠崎さんが神主になったのは20年前。東京農業大学卒業後、実家がある小美玉市に戻って農業を継いだ。篠崎さんのお宅は約10ヘクタールという広大な農地を有し、様々な露地野菜や米を作る専業農家だが、親戚の神主さんが後継者不在で困っていた中、やってみないかと声を掛けられた。幼い頃から神主が親戚でもあり身近な存在だったし、違和感なく受け入れた。
資格を取り、大洗磯前神社で30日の実習を行い、その後地元の先代宮司について祭礼に出向き、各地域の氏子さんたちに顔見せをしながら引き継いでいった。地元出身ということで、氏子さんたちにも歓迎され、問題なく引き継ぎができたことがありがたいと語る。現在担当している神社は、最初に宮司となった部室の貴船神社を本務社としながら、市内11社と市外2社を兼務している。
先輩には「篠崎君はいい環境で神主をやっている」と言われる。確かに農業と神主は兼業する上で相性がいいという。田植えの前にその年の収穫を祈る春祭りがあり、秋の稲刈りの後に豊かな実りに感謝する秋祭りがある。収穫に感謝し神様に新米などを捧げるのが秋祭りの起源。「うちでもお米を作っているので、その収穫を祈り収穫に感謝し、また地域の安寧を祈るというこのサイクルは、神主であり農家である自分にとって非常に理にかなっている。自分自身が全てに携わっているのだから」と篠崎さん。神主の仕事は他にも節分祭や氏神様のお祭り、埋井祭、地鎮祭や神葬祭など地域に寄り添う神事がある。
神社といえばお宮参りにはじまり、初詣、七五三、厄除けや神道式のお葬式である神葬祭など私たちの一生にかかわる存在。今回、恋愛成就、子宝、安産祈願にご利益がある「部室貴船神社の宿木様」に案内いただいた。身近な信仰行事を軸に、コミュニティを支える神主さんという役目。篠崎さんのような神主が、私たちのかけがえのない日常を支えてくれており、地域の連帯感やふるさとの誇りが受け継がれているのだと思った。なかなか遠出もできない時期。来年の初詣は、皆さんの近所にある神社に参拝してみてはいかがだろうか。地域に流れてきた歴史と人々の想いがそこにあるはずだ。
コメント ( 15 )
私たちが安心して暮らせるのも篠崎さんの様な神主さんがいてくれるからですね。感謝します。
小美玉市で常に神主さんが常駐している神社は1社しかありません。
他の神社は全て、篠崎さんのような神主さんが兼務しているわけですね。
市内11社と市外2社とは!そして農業10ヘクタールも!大忙しですね!
兼務されているのは旧美野里地区の神社(江戸もです)で11社。
それと茨城町で2社だそうです。
神主さんが減っているので、兼務社が増えていくという実状ですね。
神主さんの仕事がよく分かりました。兼業されているというのに驚きました❗️
そうですね、神主さんの収入だけではとてもやっていけないという問題が背景にあって
兼業されている神主さんは結構いらっしゃるようです。
今回、そういったことも知っていただけて嬉しいです。
神主さんになるまでの経緯にびっくりしました!
地元の神社にも興味が湧いてきたので、次の初詣は近場に行ってみたいです。
私も取材してはじめて知ったことが多くありました。
地域の神社を見直すききっかけになってくれたら嬉しいです。
とても興味深いライフヒストリーで面白かったです!小美玉以外でも後継者不足に悩む神社はあると思うので、ぜひ全国の方に届いてほしい記事だと思いました。
けいのえりな様
神主様不足もそうなのですが、神社の氏子の数が減っていっている現状、こちらも深刻です。
小美玉市内の神社には、氏子制度を廃止して、地区として神社を守っていくようにされているところもあります。
このような事例も参考にしながら、伝統を守り継いでいきたいものですね。
けいのえりな様
神主様不足もそうなのですが、神社の氏子の数が減っていっている現状、こちらも深刻です。
小美玉市内の神社には、氏子制度を廃止して、地区として神社を守っていくようにされているところもあります。
このような事例も参考にしながら、伝統を守り継いでいきたいものですね。
地元の方の、しかも先輩の活躍が紹介されること嬉しい限りです。今後も色々な人&モノが発見されることや、その後のことまでクローズアップされること期待します。
篠原様
励みになる温かいコメントをありがとうございます。
普段あまりクローズアップされないことを取り上げられるのもタウンジャーナル小美玉の強みだと思います。
今後ともよろしくお願いします。
小美玉市民9年目になりますが、地域の暮らしを題材にされた素晴らしい記事ですね。
年越しや新年の参拝は、近くの神社が良いですね。
今年は、3日に海が見える処でしたが、小川の素鵞神社へ参拝してきます。
tomiji様
普段あまり表に出ない、むしろ表に出さないことが、神道だったりするのですが
今回あえて取り上げてみました。
ありがとうございます。