ふるさと、小美玉で記念公演を! ~滝平二郎生誕百年記念プロジェクト~

イベント

小美玉市出身のきりえ作家、滝平二郎(たきだいら・じろう、1921~2009)氏の生誕100年を記念し、 朗読パフォーマンス「こんにちは、滝平二郎さん!」が2022年、小美玉市生涯学習センター コスモス(同市高崎)で行われます。主催は、滝平二郎生誕百年記念プロジェクト実行委員会。地元住民の力で滝平作品の魅力をより多くの人に伝えようと実行委員会が発足しました。スライドに合わせた朗読にオカリーナの生演奏も加わり、作品の世界を表現します。2021年9月に開催を予定していましたが、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、2022年に延期になりました。

実行委員会の主体は小美玉市の六つの読み聞かせグループ。市内の図書館・幼稚園・保育園・小学校や高齢者福祉施設などで絵本の読み聞かせを行っているボランティアグループで、半数以上のグループに約30年の歴史があります。実行委員会のメンバーは計26人、全員が演者でもあります。実行委員長の小玉知子さんは「いつもそれぞれ別に活動している私たちがこうしてタッグを組んだのは、滝平さんへの共通する思いがあったから。郷愁誘う温かな滝平さんのきりえの世界がみんな大好き!何とか私たちの手で記念の朗読会を開きたいんです」と話していました。(2021年7月インタビュー)

滝平二郎氏は、1921年茨城県新治郡玉川村(現小美玉市)に生まれました。戦後、木版画制作のかたわら出版美術の仕事に取り組み、児童文学作家・斎藤隆介氏との出会いもあって、数々の絵本作品を生み出しました。きりえ画家に移行したのは1960年代後半といわれています。

今回の記念公演では、『モチモチの木』『花さき山』『ソメコとオニ』(すべて斎藤隆介作、滝平二郎絵、岩崎書店)と、同氏の随筆集『母のくれたお守り袋』(岩崎書店)の朗読などで滝平二郎の世界と生涯をたどります。水戸芸術館専属劇団ACM所属俳優・塩谷亮氏が演出を手掛け、オカリーナ奏者おがわゆみこ氏の演奏も加わります。一部のメンバーと以前から交流があった両氏に協力を求め、メンバーそれぞれの個性を生かした声の表現と所作で、楽しく、やさしく、時には力強く朗読パフォーマンスを作り上げます。

※塩谷亮氏とおがわゆみこ氏

◆公演当日までプロジェクトの動きを密着取材して、メンバーの努力と賛同する人の輪の広がりを紹介します。

実行委員会は5月に発足。すべてがゼロからのスタートでした。六つのグループが資金を持ち寄り、何とか予算計画を立てました。500席を超える大ホールでの朗読パフォーマンスは初めての試みです。企画・構成・運営のどれもが戸惑いの連続でした。特に感染対策が大きな課題と考え、企画会議では多くの意見が飛び交いました。議論の末、入場者数を大幅に減らして人の接触をできるだけ避けることにしました。

6月、塩谷亮氏 (劇団ACM所属俳優) と、おがわゆみこ氏 (オカリーナ奏者) が協力に快諾。しかしプロジェクトには何の後ろ盾もなく、不安は尽きませんでした。そんな中、日頃の読み聞かせ活動を支援してくれている図書館職員は親身になって、「市に共催を申請してみては?」とアドバイスをくれました。メンバーは、小美玉市と関係各所を回り、企画の説明をして支援や援助をお願いしました。共催に小美玉市・市図書館・市図書館協議会、協賛には市社会福祉協議会と市文化協会、後援には市教育委員会が付いてくれることになりました。会場スタッフを引き受けてくれるボランティアグループも見つかりました。スタッフとしての応援は強力な助っ人になります。自分たちの思いに共感してくれる人が日ごとに増えていったことにメンバーは感激しました。

※稽古の様子

7月、塩谷氏による本格的な稽古が始まりました。「今回は、大きな空間での公演です。いつもより大げさに感じるくらいセリフをデフォルメしてみましょう」と塩谷氏は体を使いながら熱心に指導していました。間の取り方、息継ぎのタイミングもちょっと変えただけで伝わり方が違ってきます。メンバー全員が、指摘されたポイントの一つ一つを台本に書き入れ、練習を重ねました。茨城新聞社から取材を受け、市の広報誌でも紹介されて、徐々に注目されるようになりました。

8月初旬、急速に新型コロナウィルス感染が拡大し、市内の文化ホールと生涯学習施設は臨時休館することになりました。本番を目前にして稽古や打ち合わせが全くできなくなったことから、実行委員会は公演の延期を決めました。

※公演延期について話し合う会議の様子

メンバーは落胆し、やるせない気持ちでいっぱいになったそうです。しかし実行委員長の小玉さんは「公演の延期はとても残念ですが、私たちの思いは一つのままです。諦めません! 来年こそは、素敵な滝平二郎の世界を小美玉の皆さんにお届けします。私たちプロジェクトチームの手で!! 」と力強く話していました。

<<続編につづく

  • コメント ( 4 )

  1. ブルたん

    心のこもった素晴らしい記事を書いてくださり、実行委員会のメンバーを代表してあらためてお礼を申し上げます。感謝の気持ちでいっぱいです。来年こそ、この記事にふさわしい、いえそれ以上のパフォーマンスを皆さんにお届けできるようメンバー一丸となって頑張ります!

    • 瀧澤比佐乃

      ブルたん様
      コメントありがとうございます。
      プロジェクトメンバーのみなさんの熱意と努力に感銘を受け、どうしても記事にしたいと思いました。
      快く承諾してくださり、ありがとうございます。
      これから公演の当日までまたお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

  2. 齋藤友幸

    投稿を見て、これからの文化的事業は、市民が中心になって市民達の環の結びによって団体や役所を巻き込んでやるものと感じました。今以上に、大学法人でも学資が削られて行くなか、人格構成に必要な教育が大変になってゆくと思います。今回のように読み聞かせのボランティアの方々の知恵と環が大きな市と部門に目を向けて頂いたのだと思います。コロナ渦に負けないで次のステップへ進んでくださいね。開催の時には受付でも交通整理でも参加させていただきます。流石‼ ダイヤモンドシティ小美玉ですね

    • 瀧澤比佐乃

      斎藤様
      コメントありがとうございます。
      いただいたコメントの一言一言、まさに私がお伝えしたかったことです!
      このプロジェクトは、市民文化事業の未来を担っていると私は思っています。
      賛同して頂き、とてもうれしいです。
      プロジェクトメンバーのみなさんにも必ずお伝えします!

瀧澤比佐乃

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★編集部★ レポーターとして奮闘中の主婦です。

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